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掻い摘んで後ろからばっさり(改

エミルクロニクルオンライン クローバーサーバーでうろつく誤爆剣士の腐れ雑記。                                     貴方の「(´_ゝ`)・・・・・・」をお待ちしています。

掻い摘んで後ろからばっさり:「Serendipity」(6)

私を、あげよう。
他には何も、あげられないけど。



さあ、お話の続きを初めようか。

 掻い摘んで後ろからばっさり:2-6(セレンディピティ)



エミルの世界に行って欲しい、と。

途切れ途切れのその声で、セレンディピティは言いました。
何を言い出すかと目を丸くするセレンに、そのまま続けて二言三言。
長い時間を過ごしたエミルの世界。そこに残した忘れ物。
「それ」ならセレンを、「もう一人の自分」を、見守ってくれるかもしれません。
セレンが泣きながら頷くのを見て、彼女は薄く笑みました。

それは、彼女の自己満足でしか、ないけれど。
彼女に残せる物は僅かだから。
私の代わりに残せる人を。

自分自身は消えるのみ。
継いでくれとは言いません。
忘れられても構いません。

私の謳が
私の体が
私の命が
私の心が

たとえ今一時だけでも、貴女の糧になれば良いのです。


「・・・あなたに、おまもりを、あげる、から」

最後の力を振り絞って、セレンディピティは喉を震わせます。

「わたしを、あげる。・・・いのちを、なまえを、あげる」

囁き声にしかなれない、途切れ途切れの小さな声で。
それでも彼女は、歌ではない言葉で伝える為に、懸命に言葉を紡ぎました。

「・・・ねぇ、よく聞いて、"小さい私"―――」

色々なものを見て、聞いて、触れて、いらっしゃい。
そこで感じた想いが、貴女の謳になるのだから。
世界中に響かなくても、人々の全てに届かなくても、
いつか、貴女の大切な世界が出来たときに、きっと。
とても強い祈りを、強い魔法を、謳えるようになるのだから。

その歌が、その祈りが。
どうか、幸せな声で紡がれますように。

「だから・・・いってらっしゃい、"セレンディピティ"」

「私」をあげよう。
他には何もあげられないから。

貴女の歌が、誰かの幸福の鍵になるように。
貴女の祈りで、誰かが幸福への導を見出せるように。
いつか貴女自身が、幸福の種子を探せるように。

もう光も見えない、私の代わりに。


「・・・わたしの・・・すべてを、あげる。・・・さあ、    ―――」

ぐちゅん、と音がして、セレンの両手の上に、柔らかいものが載せられました。

熟れた桃のように水気があって、
縫いぐるみよりも柔らかくて、
とても、どきどきする香りがする、何か。

見下ろす先ではタイタニアの瞳が、すいと閉じられます。
光輪の光がだんだんとぼやけて、ふっと消えるのを見ました。

「・・・レン・・・ディ・・・?」

両手の「お守り」は暖かくて。
宝石みたいにキラキラ光っていて。

"セレンディピティ"が、もう動かないのだと、莫迦な少女にも理解できました。
不思議な事に、あれほど流れていた涙は、ぴたりと止まっています。

 だって、かなしくないんです。

『セレンディピティ』という名前。
それを、貰ったと言う事。
彼女の命を、貰ったと言う事。

 それって、もしかして。
 レンディは、ずっといっしょにいてくれるって、ことじゃないですか?


足りない頭がやっとその考えに至って、少女はにこりと笑います。

もう動いてくれないけれど。
もう歌ってくれないけれど。
もう撫でてくれないけれど。

それでも、彼女は一緒にいてくれるのだ、と。
小さなセレンディピティは、少し胸の辺りが暖かくなりました。

「・・・おやすみ、なさい。・・・・・・それと、・・・      。」

小さく呟いて、『セレンディピティ』は両手のモノをそっと口元に押し上げます。
『おまもり』は、錆びた味を舌に残して、じんわりお腹に収まりました。





エミルの世界に来れたのは、それからまた時間が経ってから。
手続きの時に知りましたが、12才になったと思っていた私は、実はまだ10才でした。
どうりで大きくなれない訳です。
初めての世界は眩しくて、きちんと目を開けて上を見られません。

大空の色も
太陽の光も
風の温度も
土の感触も

全てがふわりと暖かくて、とても嬉しくなってきます。
お腹の中も、今日はいつもよりぽかぽかです。レンディも嬉しいのかもしれません。

「さて、と」

目の前の大きな橋を越えたら、アクロポリスシティです。
まずは、あの広い町から「いおにあさん」を探さなければならないのです。

「お引っ越ししてないと、ありがたいのですよ」

レンディが教えてくれた場所に、その人はまだ住んでいるでしょうか。
胸がどきどきして、お腹の中がもぞもぞします。
これは「緊張」です。

「いけない、いけない」

慌ててぷるぷる首を振ります。
これから沢山の初めましてに会うのですから、いちいちどきどきしていたら、破裂するかもしれません。

「行きます、よー」

自分とレンディにそう言って、私はまた歩き出しました。






もう真っ暗な部屋の中、彼はふと顔を上げました。
何かがとんとん鳴っています。

「・・・?」

雨の音ではありません。
 地面の下に設えられたこのダウンタウンで、屋根が雨に濡れる事などありません。
風の音ではありません。
 時折強い風の吹く場所ではありますが、古い下宿が軋んでも、こんな音など立てません。
嵐の音でもありません。
 強い風雨が表層を叩こうと、地下の彼の下宿では。心配すべきは水害のみ。
聞き覚えのある音です。
 そうなれば、音の原因は一つだけ。

ドアをとんとん叩く音。
夕食時も過ぎて数時間、最早夜半に届く頃。
こんな時間に誰でしょう。

「こんばんは、いおにあさんですか」

たどたどしく苗字を呼ばれて、くっと眉間に皺が寄ります。
名前ではなくわざわざ姓を呼ぶなど、ギルド評議会のいけ好かない役員か、混成騎士団の連中か。
妙に高い声も、舌っ足らずな発音も、酷く怪しい物に感じます。

「・・・そうだが、アンタは誰だ」

警戒の色も露わに声を掛けると、外の何者かがひゅっと息を吸い込んだのが聞こえました。
緊張でもしているのでしょうか。
はふと息を吐いて、呼吸を整える音がします。
一つ、二つと呼吸の音を数えて、訪問者が大きく息を吸い込みました。

「えっと、えっと・・・セレンディピティです」

息を飲んで、彼はその場に固まります。

 今、ドアの外の何者かは。
 とても懐かしい名前を、言わなかっただろうか。


一年余りの時間を、探し回りました。
何の痕跡すら残さず、ふらりと消えたバードの女性。
彼等の、大切な仲間でした。

事件にでも巻き込まれたか、事故にでも行きあったのか。
どちらにしろ、彼女は強いのです。
そうそう大事にはならないと、最初は然程の心配はありませんでした。
それでも、彼等は冒険者。
何処で何が起こっても、可笑しくはありません。
旅の途中で命を落とす事など、当たり前に起こる筈なのです。

一日が経ち。
三日が経ち。
一週間が経つ頃に、嫌な予感に襲われて、彼等は四方を探し回り始めました。

一月が経ち。
三月が経ち。
半年が経つ頃になっても、彼女は見つかることはありませんでした。

そして、季節が二周目に入っても、なお。

白い翼、紅い髪。
紅い瞳のタイタニア。

自分達に何も言わずに、大切な仲間が消えたのです。
しかし、ドアの外に立つ何者かは、彼女と同じ名前を名乗るのです。

 性質の悪い、冗談だ。

相手が相手ならば、すぐにでも戦闘に入れるように、彼は杖を掴んでドアに近づきました。
ドアの外から物騒な気配はしませんが、何が起こるか解りません。

充分な距離を取れるように、動きを頭で組み立てて。
即座に詠唱に入れるように、ゆっくり呼吸を整えて。
五つ数えて勢いよく開いたドアの、その先に。

「・・・え」

皮膜のついた黒い翼。
先の尖った、細長い尾。
鮮やかな菫色の、長い髪。
黒に見える程色の濃い、紫の目。
如何にも此方に出てきたばかりと伺える、支給品のチューブトップとショートパンツの軽装。

小柄なドミニオンの少女が、ちょこんと立っていました。

「いおにあさんですか?」

ぱちりと大きく瞬きをして、彼女は勢いよく彼に尋ねます。

「・・・いおにあさん、ですが」

目を丸くしたままの顔で、彼は拍子抜けした声で答えます。
少女は、そんな彼に構わずにっこり笑って、良かった、と呟きました。

そうして、軽く呼吸を整えて、彼女はすいと片脚を後ろに引きます。

「夜分失礼いたします。とある方に申しつけられまして、こちらに訊ねてまいりました」

膝を曲げて、片手を胸に遣って、頭を下げて。

「あらためて・・・はじめまして。セレンディピティと、申します―――」

呆気に取られる青年を前に、丁寧なお辞儀をしてみせました。




こうして祈りは希望の空へ。
空気へ溶けて、大地を駆けて、
幸せな世界を謳うため。

さあ、お話は、これでおしまい。
次のお話は、何だろうね。

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  1. 2008/12/26(金) 01:41:52|
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黐茅日華

Author:黐茅日華


マイナージャンルに走りがちな、頭の固い場末の同人屋。
書いたり描いたり塗ったり縫ったり、ノリと勢いで色々と。
ECO四葉鯖にて温いRPしたりニコ厨したり東方したり。


えrg二次にうっかり手を出す→

メーカーがBL始めて片脚入る→

いつの間にか此処に至る。



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