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掻い摘んで後ろからばっさり(改

エミルクロニクルオンライン クローバーサーバーでうろつく誤爆剣士の腐れ雑記。                                     貴方の「(´_ゝ`)・・・・・・」をお待ちしています。

掻い摘んで後ろからばっさり:「Selen」(2)


あなたは なんですか。
わたしは せれんです。

あなたは ひとですか。
わたしは せれんです。

あなたは だれですか。
わたしは セレンです。


さあ、お話の続きを始めようか。


乳離れした途端に、部屋から乳母がいなくなりました。
歩きだした途端に、部屋から介助人がいなくなりました。
独りで食事が摂れるようになると、誰もいなくなりました。

誰も答えません。
誰も語りません。

耳にするのは、たった九つの言葉。

「おはようございます」
「ちょうしょくのおじかんです」
「おかげんはいかがですか」
「ちゅうしょくをおとりください」
「しつれいいたします」
「おそうじをいたします」
「おゆうしょくをおもちしました」
「ゆあみをなさってください」
「おやすみなさいませ」

口にするのは、たった一つの言葉。

「はい、わかりました」

知っているのは、たった一つの名前。

「せれん」

その三文字が己を差す単語なのだと言う事は、彼女も理解できていました。
年を追うごとに長く色の濃くなる髪は、段々紫色になってきましたが、灰色だった彼女の名前はずっと変わらず灰色でした。

とはいえ、その三文字を口にする人など、今の彼女の周りには居ないのです。
たった九つの言葉に、たった一つの言葉で応えながら、沢山の人の住む家の中で、たった一人で日々を過ごします。

「おはようございます」
窓のカーテンが引かれて、ベッドの上で目を覚まします。
「ちょうしょくのおじかんです」
良い匂いのする、暖かい物を口から入れて飲み込みます。
「おかげんはいかがですか」
ベッドの上で、飛んだり跳ねたりしていると、
「ちゅうしょくをおとりください」
良い匂いのする、口に入れるものが運ばれてきます。
「しつれいいたします」
床の上を、ころころ転がっていると、
「おそうじをいたします」
狭いベッドの上で、転がらなければならなくなります。
「おゆうしょくをおもちしました」
蝋燭の明かりの下で、暖かい物を沢山飲み込むと、体の真ん中が少しずっしりします。
「ゆあみをなさってください」
部屋の隅の箱に張られた暖かいお湯に放り込まれて、長く延びた髪の先から爪先までごしごしとやられます。
「おやすみなさいませ」
自分で口の中をごしごしとやってから、漸く開放されて、ベッドの中にもぐりこみます。

寂しいと思うことなどありません。
寂しいということすら知りません。
楽しいと思うことなどありません。
楽しいということすら知りません。

問う者も無く
応える者も無く
問う事を諦め
応える事を諦め

ただ独り、ベッドの上を飛び跳ね、床の上をころころ転げ廻り、食事を取って湯浴みして眠る。
しかし、「まるで家畜のようだ」と思う事すら、無知な彼女にはできません。
この生活は死ぬまで続くのだろうと、漠然とした物を、頭の中にしまいこむだけ。

そして、その日も、彼女はそんな一日を送るはずでした。

「おはようございます」

窓のカーテンが引かれて、ベッドの上で目を覚まします。

「ちょうしょくのおじかんです」

テーブルに朝食を置くと、使用人は一礼して部屋を出て行きます。
食べ終わったら、使った物をワゴンに乗せて、部屋の外に出しておくのです。
ベッドから降りて、ふと窓の外に目をやると、そこにはいつもと違う 何か がありました。

「・・・・・・?」

何か は、とんとんと窓を叩きます。

「あけて、なかにいれて」

何を言っているのか、彼女には理解できません。
ですが、窓が次第に強く叩かれて、がしゃがしゃと鳴るのに、何か怖いものを感じました。
これ以上叩かれたら、窓が壊れてしまうかもしれない、と思ったのです。

「はい、わかりました」

眉間がぎゅっと引きつるのを、不快に感じながら、セレンは窓を開けます。

「ありがとう、たすかったわ」

窓をぴったりと閉めてかんぬきをかけ、何かはそう言ってセレンに頭を下げました。

フシギな形をしています。
セレンよりも長い髪の毛。
セレンよりも大きな翼。
セレンよりも高い背。

そして、セレンにあって、セレンに無い物がありました。

大きな翼は真っ白で、ふかふかの羽毛が。
腰の下には尻尾が無くて、代わりに頭の後ろに光る輪が。
そして、長い髪と、両の目は。

セレンが欲しかった、赤い色でした。

胸の辺りが、ぎゅっと締め付けられるようです。
窓の外と、家の中で、ばたばたと音がします。

「おねがい、かくして」
「あ、」

赤い生き物はそう言って、部屋の中へ駆け込みます。
セレンが無意識に伸ばした手をすり抜けて、それはベッドの下へともぐりこんでしまいました。
すっかり困ってしまった時に、部屋のドアを叩く音がしました。

「この部屋は何ですか?」
「あ、その、そこは、保管庫です」
「調べさせて頂いても良いですか?」
「貴方、外から窓や戸が破られた形跡は無かったのでしょう?此処には誰もいませんよ」
「ですが、万が一と言う事も」
「貴重な品が山と積まれて仕舞われているのです。中の物に指一本触れずに探せると、貴方は約束できるのですか?」

使用人の声と、聞きなれない声がします。
やがて、諦めたのか、二つの声は遠くへ行ってしまいました。

「ありがとう」

もそもそと、ベッドカバーの下の方が動きました。

「たすかったわ。べっどのした、いがいときれいなのね」

云いながら、変な生き物がベッドの下から出てきました。
目をぱちぱちさせて、セレンはじっとそれを見ています。

「はじめまして」
「・・・は、はじめ、まして」

ぺこりと頭を下げた生き物に、これはきっと「おはようございます」と同じものなのだと思ったセレンは、同じ言葉を返します。

「あなたは、わたしをこわがらないのね」

生き物は、にこにこと笑っています。
何がなんだかわかりませんが、セレンはこくりと頷きました。

「ところで、あなたはだあれ?」

初めて聞く言葉です。
貴方は誰、なんて、今まで誰もセレンに訊ねた人はいないのです。

「・・・・・・」

何と答えたら良いのか解らず、セレンは困って首を傾げます。

「・・・もしかして、ことばが、わからないのかしら」

目の前の生き物は、うーんと唸っています。
セレンは、ただただ首を傾げるばかり。

「・・・ふむ」

暫く唸った後で、生き物は、ベッドを指差しました。

「あれは、べっど」

次に椅子を指差して、

「あれは、いす」

床に転がる玩具を指して、

「あれは、くまのぬいぐるみ」
「あれは、にんぎょう」
「あれは、つみき」
「あれは、ほん」

さすがに、セレンにも解りました。
この生き物は、指差した物を「何と呼ぶのか」言っているのでしょう。

そして、最後に、生き物はセレンを指差しました。

「それでは、あなたは?」

セレンは、少し嬉しくなりました。
今まで誰も、彼女を「何と呼ぶのか」聞いてくれた事は無かったのです。

「せれん」

セレンは、自分を指差して、そう言いました。

「そう。あなたは、セレン」

生き物はそう云って笑います。
そして、次に自分を指差して、こういいました。

「わたしは、セレンディピティ」
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テーマ:エミルクロニクルオンライン - ジャンル:オンラインゲーム

  1. 2008/02/08(金) 11:59:13|
  2. 小噺
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黐茅日華

Author:黐茅日華


マイナージャンルに走りがちな、頭の固い場末の同人屋。
書いたり描いたり塗ったり縫ったり、ノリと勢いで色々と。
ECO四葉鯖にて温いRPしたりニコ厨したり東方したり。


えrg二次にうっかり手を出す→

メーカーがBL始めて片脚入る→

いつの間にか此処に至る。



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